基調講演

基調講演I : 1月25日(水), 9:00-10:00, 小ホール, 5F

自動車のエレクトロニクス~たゆまぬ成長の行方
(Automotive Electronics: Steady Growth for Years to Come)

Alberto Sangiovanni-Vincentelli

Alberto Sangiovanni-Vincentelli

The Edgar L. and Harold H. Buttner Chair of Electrical Engineering and Computer Science, University of California, Berkeley
and Chief Technology Advisor, Member of the Board and Co-founder, Cadence Design Systems United States

エレクトロニクスの世界は、製品の着想、設計、及びインプリメンテ-ション等の面で革命的な変遷を経験しつつあります。ウェブの重要性は今までになく高まり、超高性能の演算力を持つマイクロプロセッサが出現し、ワイヤレス通信は爆発的に普及し、新世代の集積されたセンサやアクチュエータは、我々が暮らし、働いている世界を日々変化させています。現代の新しいキーワードとして、以下が挙げられます。

  • エレクトロニクスの透明化:例.エレクトロニクスはユーザの目に触れにくいものとなり、舞台裏にて役立つものにならなければならない。
  • コンピューティング技術の浸透:例.エレクトロニクスが世間には溢れている。世間で一般的に広く使用されている製品には、必ず何らかのエレクトロニクス的な要素がある。
  • 情報に囲まれた環境: 例.エレクトロニクス・コンポーネントの使用により、周囲が我々に反応する。我々が誰であり、何が好きかなどをエレクトロニクスにより、認識する。
  • 身に付けられるコンピューティング技術:例.帽子、あるいは時計にように身につけられる新しい製品が出現している。そのような製品は、我々の装いの一部となる。そのような製品のうちの幾つかは、我々に関する重要な情報を全て含む名札のようなものになる。
  • より多くの情報を少なく携帯: 例.周囲の環境が我々を詳しく識別できるようになるため、鍵やクレジット・カード、身分証明、アクセス・コードなどを持ち歩かなくてもよくなる。

全てを備えた小宇宙としての自動車も、同じような変遷を遂げつつあります。上記のキーワードは、自動車業界においても大きな影響を持つものとなります。我々は、自動車というものが何であり、エレクトロニクスが自動車においてどのような役割を果たすのか、再考する必要があります。エレクトロニクスは、自動車にとって、動作を制御し、車内の化学的及び電気的プロセスを管理し、乗客にエンターテイメントを提供し、外界とのコネクティビティを確立し、そして安全を確保するために、今や不可欠な存在となっています。今後数年間の間に、自動車メーカのコア・コンピタンシはどのようなものになるのでしょうか?エレクトロニクスは、自動車のデザイン及び製造において、不可欠な要素となるのでしょうか? このようなトレンドの中、自動車業界における課題及びビジネス・チャンスは、以下の内容と深い関わりを持っています。

  • どのように「メカ」と「エレクトロニクス」を統合するか:例. 自動車の世界で、いわゆるメカトロニクスをいかに実現するか。
  • 互いに異なるモーション・コントロール及びパワー・トレイン・コントロール機能をいかに統合し、重要なシナジー効果を得られるようにするか。
  • エンターテイメント、コミュニケーション、及びナビゲーション・サブシステムをいかに統合するか。
  • 製品のライフサイクルが2年前後あるいはそれ以下に短期化しつつあるエレクトロニクスの分野を、いかにして製品のライフサイクルが10年間、あるいはそれ以上に長期化つつある自動車の分野と組み合わせるか。
  • エレクトロニクス技術に基づいた新しいサービスをいかに構築するか。
  • 自動車間のコミュニケーション及びグローバル・ポジショニング・システムやセルラー・ネットワークなどによる自動車と通信インフラとの間の通信をいかに最大化するか。
  • 市場はどのような変遷を遂げているか(例えば、自動車向けエレクトロニクスのアフター・マーケット市場が存在する場合、その規模はどの程度になるのか、等)。

この講演では、過去数年間に渡って台頭してきた最も重要なテクノロジ及び製品開発状況を振り返りながら、以上のような問題提起を行っていきます。また、自動車向けのエレクトロニクス製品の設計がどのようになされるべきかに関する新しいトレンドについてもご紹介します。そして最後に、AUTOSARコンソーシアムの存在を取り上げつつ、デザイン・チェーンの構造を大きく揺るがすであろう自動車向けエレクトロニクス業界のダイナミクスを分析します。

(基調講演Iの同時通訳はありません)

基調講演II (同時通訳付き) : 1月26日(木), 9:00-10:00, 小ホール, 5F

デバイス・イノベーションを起こす
(Challenging Device Innovation)

Satoru Ito

伊藤 達 氏

株式会社ルネサステクノロジ 社長&CEO

半導体産業は、連続的なイノベーションの積み重ねで、人々の生活を劇的に変化させてきた。半導体製造における微細化の技術的障壁や経済性が課題として認識されている。この課題の克服には、単に半導体メーカーの取り組みに止まらず、顧客を含めた半導体産業に関わる全てのパートナーとの連携が重要である。特に半導体設計は、従来の狭義のEDA技術から、システム設計者やSoC設計者、開発ツールの設計者との密接な関係における新たなEDA技術が必要となるだろう。

アプリケーションのコンバージェンスと微細化が進展する中での我々の技術的課題と経済的課題への取り組みの方向を示したい。

基調講演III (同時通訳付き) : 1月27日(金), 9:00-10:00, 小ホール, 5F

デジタル開発のプラットフォームについて (タイトルが変更となりました)
(Platform Structure for Digital Products Development)

Yukichi Niwa

丹羽 雄吉 氏

キヤノン株式会社 常任理事

プラットフォーム・ベースの開発(PBD)は、段階的な開発作業と商品企画をベースとした開発作業、双方に対して新しい付加価値を提供することを狙いとしています。既存のテクノロジに新しいテクノロジを付加し、各種テクノロジを再利用可能なアセットとして蓄積することで、PBDは高品質、低コスト、そして短期間の開発TATを実現します。さらに、PBDは、設計者がテクノロジを選択し、集中することで不必要な開発工数を省く、いわゆるターゲット主導の開発を可能にします。

PBDを効率的に実践するためには、独立したレイヤにおける個々の設計の専門家が、何らの制限・拘束なしに担当する設計部分の効率性を最大化できるようなデジタル・アナログテクノロジの強固なストラクチャリングを導入することが重要です。レイヤのストラクチャリングを行うことは、すなわち開発メソドロジ上でアーキテクチャの設計を行うことに他なりません。従って、ビジネスの収益性管理の成功は、よいアーキテクチャ開発者がいるかどうかに直接的にかかっている、と言っても過言ではありません。

次の段階で重要なことは、コンピュータ資源に投資することで、設計プロセスを最適化することです。例えば、シミュレーション・テクノロジを高品質なイメージング・テクノロジ、エンベデッド・システム(ハードウェア・ソフトウェア)・テクノロジ、あるいはコミュニケーション・テクノロジ等に完全に順応させることが必要です。設計フェーズ早期の段階での定量的な評価及び蓄積された設計ノウハウ(IPやメソドロジ等)をベースとしたワーク・フローは、技術革新を促進し、プラットフォームのさらなる強化に繋がります。その結果、最終的に企業の上層部は、大規模なシステム設計の効率化によって、絶対的な強みをダイレクトに得られるようになります。

Last Updated on: 1, 26, 2006